2020年からのコロナ禍では、感染リスクを避けるための「受診控え」が増え、往診サービスが急速に拡大しました。スマートフォンアプリを利用した診療依頼は、特に小児医療で注目され、医療費助成も受けられることから、利用者が増加しました。2023年には新型コロナウイルスが5類感染症に移行しましたが、往診サービスのニーズは引き続き高いと見られています。
訪問診療は、計画的に自宅を訪問する定期的な医療で、主に病状の悪化防止を目的としています。一方、往診は患者の急変時や家族からの要請に応じて行われる緊急対応の医療です。訪問診療は2週間に1回、月に1回などの頻度で行われ、往診は急な病状悪化や末期がん患者の看取りなどにも対応します。
訪問診療と往診の診療報酬には大きな差があります。訪問診療は予定に基づいて行われるため、医療従事者の負担が少なく報酬は安定していますが、往診は24時間対応が必要なため報酬が高く設定されています。2024年度の診療報酬改定では、訪問診療を受けていない患者への往診の報酬が大幅に引き下げられ、医師への負担が軽減されるよう工夫がされています。
在宅療養支援診療所は、在宅医療を専門に提供する医療機関で、外来診療はほとんど行わず、24時間体制で在宅診療を行います。2016年度から新規開設が認められ、患者が自宅で医療を受ける環境を整えています。特に、今後の社会では高齢者の増加に伴い、在宅医療の需要が高まることが予測されており、この分野の重要性が増すと考えられます。
日本では高齢化が進み、年間死亡者数が増加しています。1995年から2022年の間に死亡者数は約60万人増加し、2040年には167万人に達すると予想されています。この状況において、病院で亡くなる人の割合は依然として高いものの、自宅での看取りを希望する人も多く、在宅医療のニーズは増加しています。在宅療養支援診療所の役割は今後ますます重要となるでしょう。
訪問診療と往診は、計画的な診療と緊急対応という異なる特徴を持ち、それぞれに対応する診療報酬制度も異なります。今後の高齢化社会において、在宅医療の重要性は一層高まると予想され、訪問診療と往診を提供する医療機関の役割がますます重要となるでしょう。患者にとっても医療提供者にとっても、効率的で質の高い在宅医療の実現が求められます。